この前、もう絶体絶命(ってのは大げさですが)
タクシーに乗らねば!な状況になりまして
朝、タクシーに乗った時のこと。
運転手さんに行き先を告げると、
昨今のマンハッタン道路事情、ダブルパーキング(二重駐車?)について
不満が溜まっていたご様子、
1ブロックも行かぬ内に、聞いてくれおくれよ〜って感じで話が始まった。
ダブルパーキングなんて、しちゃいけないのに
チケットの一枚も切られないで、毎朝誰かがやってるし、
ダブルパーキングされると俺らは客を降ろせないし、
客はカーブサイド(歩道側)に降ろさないと違法だし、
どうすりゃいいってんだ!って、運転手のおじさん。
はあ、そうですよね、って頷いたものの、
ダブルパーキングしなくちゃダメなシチュエーションもあるだろうと思って、
でも、朝のパークアベニューなんかのビジネス向けのデリバリーの時なんて
どうしてもしなくちゃいけなくなっちゃうトラックもあるかもしれないしー、
と言ってみた。
そうしたら、おじさん、納得がいかなかったらしく、
こう言った。
大体ね、俺の国では車をパークしたら、エンジン止めて
鍵は差したままにしておくもんなの。
え?なんでですか〜?
そうさー、で、夜中に他人の車でドライブして、
明け方までにちゃんと戻すんだよ(笑)。
え?え〜〜〜〜〜?
子供の遊び。
子供って、おじさんはいくつの時から運転してるの?
8歳。
(絶句)
もう、この時点で、おじさんノリノリの絶好調。
すっかり機嫌が悪かったのを忘れている模様。
おじさん、どこの国から来たの?
ハイチ。
昔ね、俺の家の前に住んでいるキレイなお姉さんがいて、
大統領とデートしてたんだよ。
初めて彼女の家に来た時、モーターサイクルに乗って来たんだ。
お土産の代わりだって言って、近所に住む子供達に$10づつお小遣いをくれて。
あの時代、ピスタチオの小袋が25セントだったから、
$10なんて、子供にとっては高額だったよねー。
でも、大統領、バイクに鍵を差していかなかったんだよ。
あら、じゃ、誰も夜中にバイク乗れないわねー
(車の話を聞いたところから察して、絶対乗りたいに違いないと思って)。
そうなんだよ!
$10は嬉しかったけれど、どうしても鍵を差していないことに納得できなくて、
俺たち、バイクのガソリンを抜くことにしたんだ。
え???
(すごい悪戯小僧だ!)
大統領が朝になって出て来て、バイクに乗ってエンジンかけたら
数フィートもいかないうちに止まってしまって、大騒ぎさ。
周りの子供達にガソリンはないかって聞くから、
抜いたガソリンを上げて、また$10貰ったんだよ。
(かなり得意げ)
そしておじさんは、ああ、また会えるなら、あの大統領に会いたいな〜、
と懐かしそうな声で言った。
一頻り和んだ後、車は目的地へ到着。
そしてワタシは、8歳から運転し続けている
ハイチ人のベテラン運転手さんの車を降りたのでした。