雪が降るらしい。
今夜から吹雪になると警戒態勢を強いているこの街に、
ワタシは住んでいる。
雪が多く降る地方では、こんな程度の吹雪でも
きっと、普通に車を出して、買い物へ行ったり、映画に行ったり、って
しているのだろうけれど、
雪に慣れない都会は、ほんの10センチも積もれば
交通機関に影響は出るし、
街全体のペースが気持ち遅くなる。
暢気な自分には丁度良いっちゃ、丁度良い。
雪は嫌いじゃない。
むしろ好きかもしれない。
面倒なことが多いけれども、
なんとなく雑音を吸い込むような、あの感じが好きなのだ。
雪の中の散歩も好きだ。
ルーは、雪が大好きだった。
テレビの画面の雪にも興奮するし、
雪が降ると、外に何度も出たがっていた。
はねるように歩く姿も可愛かったし、
大人になってからの、雪を押すようにして進む姿も、
鼻に雪を積もらせて、見上げてる仕草も愛嬌があった。
去年の雪だったか、一昨年の雪だったか。
膝より上まで積もった雪では
流石のルーもすっぽり入るほどで、
跳ねても跳ねきれなく、
ワタシが雪をかき分けて、道を作りながら散歩をした。
どこまで分かっているのか定かではないけれど、
なんだか嬉しそうな顔して鼻で雪を崩したりして
手伝っているフリをしていた。
本当は、あと一度の雪と、あと一度の桜を見せてやって
それから逝かせて上げたかったなって思う。