松岡ゆかりの話

久しぶりに友達のことを書いてみようかな。
松岡ゆかりのこと。

彼女は親友だ。ただの親友ではなくって、その後ろには
悪友、戦友、諸々繋がっていて、一言で済ませられるような人ではなく、
90年代半ばから続く、一種のワーキングパートナーでもある。

高田馬場にホットハウスという世にも小さなジャズの店があって、
そこでは昔、ボーカル・ジャムセッションというのが月一のペースで開かれていて
吉田桂一さんと佐々木悌二さんがリーダーだった。(非常に贅沢な光景でしょ?)
そこで知り合って以来の仲なわけだが、
あのセッションは、1年半だか2年ぐらい続いたのかな?
その辺りの記憶は怪しいけれども、とても濃い時間が流れていたと思うし、
ボーカルを中心にしたセッションの先駆者であり、火付け役だった。

当時にして20名を超える人が集まってしまうとお店は一杯。
3、4人はバーカウンターの内側で立っていないとダメな状態。
聴くのが専門のお客様も若干いらしたので
集まった人の全てがボーカルというわけではなかったけれども、
そういう日も多分あったと思う。
そんな集団の中に居た松岡ゆかりっていうのは、
一番、頑なと言えばいいのかな、スイングさせるのが命!みたいな、
全身で歌うような感じで、スイングして気持ちよく歌えている時の
あの幸せそうな顔や、今一シックリこなかった直後の不満そうな顔は、
忘れろといっても忘れられないと思う(笑)。
いい意味で荒削りというか、とにかく20数名の歌の中では目立った
(ワタシには目立って映った。)
話をどうやって始めたのか記憶にないんだけれども
一端話をしたら、直ぐ打ち解けた気がする。

話をすると、更に彼女の線の濃い、そして真っすぐな、
常に直球勝負な感じがよく分かるんだけれども、
そこには、ふとした拍子に崩れるぐらいナイーブな部分も存在してたりして、
不思議な味のあるヤツだった(笑)。
余談だけれども、そういうところからして
彼女がアビーの音楽に深く惹かれて影響を大きく受けているのもとても自然な気がしてるし、
アビーやシャーリーへの傾倒に、彼女のバンドとしてのサウンドや
本当に歌いたい曲を選ぶ、っていう心意気のようなものが
端を発してるんじゃないかなって思ったり、、、

仲良くなって、色々な話をするにつれ直ぐに思い知らされたのは
彼女がもの凄い努力家で、人の二倍も三倍も努力をしているのが端から見ていて分かるし、
それをひけらかすこともせず、ストイックに惜しみない愛情を音楽に注いでいる点だった。
それは、最初に会った頃から今に至っても、全く変わらず、と言うよりも
以前にも増して、音楽に対する愛情であったり、敬意が深まっているというか。
多分、松岡ゆかりのボキャブラリーの中には、斜に構えるって言葉はないと思う(笑)。

外見的なものや、音楽のルーツ、育った環境やら、
音楽を自分の中に取り込むプロセスなど、我々は、本当に違うと思う。
でも、根底にある「良いものは良い」という考え方と、
「良いものは世に出さなくてはいけない」という信念でがっちり結びついていた。
そして、将来はこういうことを出来るようになりたいね、と
夢も語り合ってきたし、理想と現実の狭間で泣きたくなる日には励ましあってきた。

どれだけの時間が流れたことだろう?

自分らを取り巻く音楽環境はいろいろな意味で変わった。
決して、活動しやすい環境になったとは言い難いけれども、
去年、やっと自分のアルバムが出た。
そして、松岡ゆかりのアルバムが日本で今日、発売になる

我々は、やりたいことを続けることは間違いではないことを身をもって知った。
そして、これからも続けて行けると実感している。


ゆかりちゃん、アルバム発売、おめでとう!

    Song Travels by Yukari Matsuoka Quartet

    一つ、一つの歌が旅であり、その風景であり。
    松岡ゆかりと、彼女の仲間が旅先案内人で、
    12つの旅がアルバムに詰まっている。

    松岡ゆかり、元岡一英、吉田豊、そして横山和明の眼から見た風景を
    アルバムでまず味わってもらって、
    そしてライブに足を運んでくれたら、ワタシもとっても嬉しい。